"兄の名が出る時は大抵私と比べる時だった...
父からの手紙もいつも私への文句、兄と比べての事しか書いてはいなかった
ただ、1度だけ翼梅と言う者が私の所に来たことがあった
『兄に会いたいですか?』
それだけだった...
何を意味するものかは未だに分からないが、私は首を横に振った
私のコンプレックスは兄だったから...
会いたくなんてない.....
けど、もしも、もしも裕司の話がホントならば兄に会ってみたいとも思う.....
けれどもう、兄は私を愛してはいない....?
「バカ言わないでほしいわ
私は兄の顔すら覚えてないのよ?
ずっと...
1人でこの広い家にいたの!
愛しているなら何故、顔を見に来てくれないの?
なんで自分じゃなくて翼梅を寄越したの?
自分で来ればいいのに!」
そう言うと裕司は優しい笑顔で
「寂しかったんでしょ?
寂しくて、寂しくて
けど、音葉先輩は音乃に会いに来ていたよ
ずっと音乃を心配して、多分だけどね」
そう言われてなんでだか頬が少し緩んだ気がした
すると視線を感じて前を見た
「っ!
何よ?」
裕司が顔を除き込んできてた
少し強い口調でそう言うと笑顔で
「ん?
笑って...
まだ小さいんだから
毎日笑顔で過ごさないと
もっとよく笑って、泣いて、楽しんで、悲しんで、大きくなって...
小学校も卒業して、中学校もすぐに卒業しちゃって、
それでもまだ近くに俺がいたら
一緒に音葉先輩の所に行こう?」
そう言われてなんだか腹が立った
子供扱いされた事にだ...
でも、
ううん
「裕司!
私の友達になって!」
そう言ってみた
すると裕司は笑顔で
「もちろん
よろしくね
音乃」
そう言われて嬉しくなった"

