猪の目の酸化還元反応

「ん、欣箸は?」


「緕悍くんとサイン会の準備ですよ、丑辰先生の。」



張り切っていた二人に発破を掛けるまでも無いだろうと、猶助は数伸へトーンを落として言った。



「今や予師稿先生と並ぶ人気だからな。」



堪壇の出身地を題材にした漫画で、地元住民が盛り上げようと頑張ったこともあってネットを介して人気に火が付き、今では聖地巡礼のスポットとして旅行誌にも取り上げられるほどになった。



初めてのサイン会、ファンがかなり集まるだろうと期待が高まる。



「随分と畏まってどうした?」


「社長と罷殃社長と会食だ。」



あれ以来仲が良くなった蚯浚と認修に誘われたらしい。


営業とはつくづく面倒だと、力の格好を見て思う。



「部長、そろそろ。」


「おう。行ってくるわ。」



力を呼んだ雉歳の格好も畏まっていて、一緒に行くようだ。



「いってらっしゃい。」



いってきます。と会釈した雉歳の顔は、一年前よりは表情が柔らかくなっている気がした。



左手の薬指に光る指輪を、猶助はもう見ないふりはしない。



愛する想いも好きな漫画も、そこに求める人あらば。


不変なものとなる。