「…手、離さないでよ」

『え…?』

「………2回も言いたくない」



ギュッと詰むんだ口。

紅く染まった頬。

長いまつげ。


驚きで反射的に見た君の顔があまりに可愛かったから。


『ふははっ(笑)』

「なっ…、何で笑うのよ」

『いや…うん…可愛いなって』

「は⁈もう、何なのよ!」

『ごめんごめん(笑)そんな怒るなって』


怒ってるのは照れ隠し。


分かってるよ。

大好きな君をついつい目で追ってしまうぐらいなんだから。

褒められると、ほら。

いつもそうやって、綺麗に巻き揃えた前髪をくしゃっと触るんだ。



『紅葉、』

「なに?」

『…好きだよ』


繋いだ手。


「…へ⁈」

『2回も言いたくない!(笑)』

「うわ、意気地なし!」


握り返した君の手。


『…好きだよ』

「うふふ(笑)」

『…なんだよ』

「別に〜」


繋がった2人の影。


『紅葉は?』

「え、言って欲しいの?」

『…うん』

「しょうがないな〜」

『あー、分かった分かった。んじゃ、言わなくていいよ』

「好きだよ」

『言うのかよ(笑)』



酸っぱいキャンディーも、今なら甘く感じるだろう。


青空色のキャンディーを2人で買った頃には、空はオレンジ色に変わっていた。


明日は、オレンジ味のキャンディーを僕から君にあげよう。


君と一緒に買ったキャンディー。

いつもは小さくなったらすぐ噛んでしまうけど、今日は、最後まで口で転がして、幸せの余韻に浸りながら帰った。


Fin*