この甘い時間が、一体どのくらい過ぎたのだろうか。
廊下を、誰かが歩いてくる足音がした。
その足音があたし達の居る控室の前で止まり、続いてドアをノックする音が響いた。
「翔ー。そろそろ退室しないとー」
「…あぁ、ごめん」
部屋を開けると、麻生君を含めたバンドのメンバーが居た。
そっか。控室だもんね。荷物とか置いたままだったんだ。
あたしはなんとなく気まずくて、みんなに背を向けた。
それに気づいた翔が、あたしに近寄ってきて言った。
「みんなー、紹介するな。俺の彼女。美結」
「なっ…やっぱりお前の彼女かよーっ」
「そ。彼女。残念だったなー。晶」
笑いあう翔達の中にいたら、あたしもなんだか楽しくなった。
これが、一年間で翔が築き上げた仲間達なんだ。
あたしは翔の「彼女」として、紹介された事が嬉しくて、恥ずかしかった。
―――…
「じゃ、お疲れさんー」
「お疲れー!」
ホールを出て、みんながそれぞれの家路につく。
「送ってくよ」
翔と手を繋いで、あたしの家の方向に向かって歩き出す。
すごく幸せで、自然と足取りが軽くなる。
「ねぇ翔?明日も会えるんだよね?」
「あぁ」
「明後日も?」
「うん」
「ずっと?」
「そうだよ」
「…嬉しい」
これからはずっと
二人、一緒ね。

