「あ、美結ちゃん!」


「ぇ…」


振り向いた先には麻生君が居た。

「ちょ…こんなとこにいて平気なの?!」


「別にメジャーバンドじゃないから
普通に会場内出歩けるよ。
ライブハウスでもそうだしね」


「あぁ…」


「それよりさ、ちょっとおいでよ」
























―――…




麻生君が案内してくれたのは、ステージ袖にある控え室だった。


笑顔で扉を開ける麻生君。

その先にはバンドメンバーがいた。

翔がいた。












「あっ!!あの時の茶髪の女の子っ!!」


一人があたしを指さしてそう言った。

それに思わず視線を向けていると、突然手をひかれた。


「美結…!!」


引っ張られたあたしは、翔の腕に包まれた。


此処が控室でみんなが見てる事なんて
まるで忘れてしまっているかのように

…強く抱きしめてくる。


今度こそ、あたしは応えていいんだよね…。

翔の気持ちに…。





















「翔…!!」

























あたしは翔の背中に腕を回して、あたしを抱きしめる翔の気持ちに応えた。





止まったはずの涙が再び流れ出す。

止まったはずの時間が、再び時を刻み始める。























あたし達は、ここからもう一度始まる。