背中越しにいる翔に、あたしはいきなり手を引っ張られた。

そのまま翔の腕の中に納まったあたしは、彼にきつく抱きしめられた。


「やだ…っ!!離して!!」


「嫌なら俺の事叩いて離れなよ」


「……」


























本当は…嬉しい…。




















だけど…。





































「離してっ!!」



あたしは翔を突き飛ばして、彼の腕の中から逃れた。


「あたし、彼氏いるから…」


その言葉に、翔が反応した。

少しだけ、声が怖かった…。



「本当に好きなの?」


「好きだよ」


「俺よりも?」


「そうだよ」


「嘘だね。だって美結は俺の事好きでしょ?」


「自惚れないでよ。あたし達はもう、一年前に終わったんだよ」




もう嫌だった。

これ以上は冷静でいられない。

平常心を保てない。





















「帰るね。ばいばい」


「待てよ美結!
お前は俺の事好きなんだろ?!
この前、俺の事見に来たんじゃないのかよ?!」








叫ぶ翔の声が聞こえる。











そうだよ。


翔を見に行ったんだよ。
























だけど、振り向けない。


この鼓動は、絶対気付かれちゃいけない。