ボーイズロード ―second season―

「うん、とりあえずやろっか」


俺はメトロノームのネジを回して、空いている椅子の上に置いた。

カチカチと一定のリズムを刻みながら、振り子が左右に揺れる。


「このテンポで楽譜通りに叩いてみて」

「楽譜?こないだ、適当でいいって言っていましたよね?」

 
ほんっとに可愛くない小娘だ。

しかも適当なんて言ってない。アドリブって言ったはず。

とくにポップスなどの軽い曲などで、タンバリンなどの小物系は、アドリブで演奏されることが多い。


「楽譜通りに叩けないとアドリブなんて無理でしょ」

少しだけ、声に苛ついている感じが出てしまったけど、麻由は気づいていないようだ。


……疲れる。多分この数分で髪が相当抜けた気がする。俺、円形脱毛症になるんじゃないか。


この日は結局自分の練習ができなかった。