チヒロちゃんとライン交換、そしてあの高校に転校してから二週間が経ったある日、私はとんでもないことに気がついてしまった。同時に今まで気づかなかった自分自身を強く責めまくった。

きっかけは、クラスメイト達の私に対する態度がおかしいこと。

例えば私の近くを歩いている子がハンカチを落としたとする。
私はその子の肩を軽くたたいて、『落としたよ』と言って、ハンカチを渡す。

するとその子は、露骨に嫌そうな顔をして、『あー、ありがとごさいますー……』とかなりムカつく心のこもっていないお礼を言って、ハンカチを近くの机とかになすりつける。私が軽く叩いた肩も、手でなにかを取るように触り、その手も机になすりつける。ひどいときには人になすりつけて、なすりつけられた人と なすりつけた人のなすりつけ合いが起こる。

そう、私は『菌』とか『エキス』とかの扱いを受けている。
私、今井レイカは菌なんだ。

そして私は何で自分が菌扱いされてるか考えた。それは一時間も経たずわかった。

原因は、ラインのプロフィールの画像……!!

私は、大好きな魔法少女アニメの女の子をプロフィールの画像にしていた。

それだけならまだ大丈夫な方。その女の子の画像は……



布面積がかなり狭い水着姿……!
私、ちょっと変態……ではなく、大変態だから。

こんなのがプロフィールの画像だったら、絶対引かれるってわかってるのに……!!


だって家族とのラインは、もう一台のおんぼろスマホでやってるから。


ああ……ライン交換する前に、ちゃんとしっかり確認しておけば……!!


私のバカーー!!クソ野郎ーー!!




反省した私は、ラインの画像を、可愛くて美味しそうで女子っぽいイチゴドーナツにしました。そして学校……


「レーイーカーちゃーんっっ♪」

うわー!チヒロちゃんーー!?


「な、何……?」

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ……心臓ヤバい


「何でラインの画像変えたのーーー??」


ひいやぁぁぁぁああぁーー!!
やっぱり聞いてきたぁぁああぁあ!!


「あ、あは……は……な、なんとなくなんとなく……」


「あの画像、アニメかゲームかなんだか知らないけど、18歳未満はダメなやつじゃないのーーー??」

わざとらしいやつぅ!

ちなみに18歳未満でもOKなの!
12歳以上だったらいいの!

たまたま水着ガチャが開催されていて、私が初めて当てた最高レア度のSR(スーパーレア)が、あのエロい女の子なの!
感動で涙ながしたんだから!

って、チヒロちゃんに心を読まれたら、
最悪だね。妄想もほどほどにしないと。
心読まれるなんてあり得ないけど。





「あのキモーいエローいビキニの女の子、可愛かったのになぁ~~!!ま、私はあんな女の子の画像、キモくてエロくて直視できないけどぉ~♪あー!吐きそう!げろげろぉ~っおえ~っ」






「………………」





「どーしたのぉ?キモエロオタクのレイカちゃぁん?」





「っ、馬鹿にしないで!!」




「え……?ちょ、ちょ、ちょ、どーしたんですか、キモエロオタクさぁんー?ねえねえー?レーイー……」




「何が好きだっていいじゃないっ!!」



私は何を言ってるんだろう。



「人の好きなもの、馬鹿にしないで!!」



自分が今どうなってるのか、わからない。




「キモエロオタクとか言ってるけど、そっちのぶりっ子っぽいしゃべり方マジキモい!」



何言ってんのよ私。これじゃただのうるさいババァじゃないの。
教室にいる人達みんな、固まってるよ。




「ちょ、レイカちゃん、ひどぉい!えーん、えーん!」




「だからそれがキモいって言ってんのよぉぉおおぉおおぉ!!!!」


ちょ、止めなきゃ止めなきゃ!
何怒鳴ってんのよ私!


「うわぁあーんっ!キモいキモい言わないでぇ!」



「泣いてもないくせに『えーん』とか『うわぁあーん』とか言うなぁあぁぁあ!!」


止まらない……なんで……


「えーん!せぇーんせぇーーい!レイカちゃんがぁーー!!」



「人の事キモいとか言っときながら、あんたの方がよっぽどキモいじゃないの!」



ちょ、『あんた』なんて言ったらなにされるか……止まってよ、私っ……!













「いい加減にしろよ」














その瞬間、チヒロちゃんはまるで漫画みたいに、私の胸ぐらを掴んだ。





「キモエロオタぼっちのくせに調子乗んなよぉぉおおおぉおぉ!!!!」




私は女の子とは思えない力で投げ飛ばされた。漫画で胸ぐらをつかまれた後、ほとんどはこうなる。



クラスメイトは、そろそろとカニ歩きで教室を出ていく。盗み聞きが得意な私。耳をすませてみると……

『キタぜーーーーー!村田の本性!ギャハハハハ』

『ぶりっ子モードから戦争モードだなw』

『でもさ、あのレイカって女も、チヒロに向かってあんな風にキレるなんて、やるときはやる女なんじゃね?』

『いやいや、オタクだから、大好きなアニメをバカにされてキレただけだろ~』


その通り。私は好きなものを馬鹿にされることが大嫌い。


と、ボーッとしてる場合じゃ……



「痛い……っ!」

チヒロちゃんにお腹を足で蹴られまくる。

「私の事馬鹿にしたら、どうなるかわかってんのかオタク女!」

「や、やめ……」

そう答えるのが必死だった。

「これからの学校生活、覚悟しとけよ……!」