「た、ただいまー……」

ああ、きっと、『友達できた……?』って聞かれるんだろうな……

「あ、おかえり。」
お母さん……

「あんた、友達できたの?」

やっぱり聞いてきやがった!

「できたよー。」

もうテキトーでいいや。


「ホントに……できたの……?ねぇ……?」

くそっ、なにか証拠がいりそう……あ!


私は大急ぎでポケットからスマホを取りだし、ラインを起動した。

「ほ、ほら!証拠よ証拠!ライン交換した!」

あわててチヒロちゃんのプロフィールを見せた。

「ライン交換?あら、ホントのようね。」

すると、お母さんが私のスマホを取ってきた。

「ちょ、やめ……」

「この子のデータ、私のスマホにも登録しておくわね。娘がお世話になります、って、送らないと。」

「冗談はいいって。」

「冗談じゃないわよ……?」

お母さんが不敵な笑みを浮かべた。その時私はゾクッとした。これは冗談じゃない。

「へ……、いや、それはまずいって……」

うざかられる……きもがられる……
嫌われる……

「これで、うちの子にも友達が……
これからは授業参観でも恥ずかしくないわ。」

「っ……!」

お母さんが私をバカにするような言葉を投げかけてきて、私はムカついた。何か言い返したかった。

授業参観……だって、授業が始まる前は休み時間、終わったあとだって休み時間。
みんなすぐに友達の方へよっていく。異様なスピードで。だって、みんな、親に自分がぼっちだと思われるわけにはいかないから。

『あ、あのはしっこにいる黒髪でショートの人、私のお母さん!』

『そうなの!?エミのお母さん、若~い!』

そんな会話がクラスメイトから聞こえるなか、私は一人。周りからみれば、誰が誰の子供かなんて、双子みたいに似てないとわからないけど、隣の人から、『貴女のお子さん、どの子?』と聞かれたら、こう答えるしかない。

すみっこにいる一人ぼっちの子、と。

お母さんは、嘘が嫌いだから、そういうとき、正直に答えてしまっていつも恥ずかしい思いをするらしい。


『これからは授業参観でも恥ずかしくないわ。』

この言葉にムカついた。
言い返したかった。
でも言い返せなかった。

だって私はぼっちだから。