貴方と食事がしたいんです。

しばらくすると、2人は一緒になって部屋に帰ってきた。
雅之の手には弁当とコロッケの入ったお皿。誠司さんの手にはウーロン茶が3つ。

「お待たせ。さて食うぞ〜〜」
雅之がそう言いながら弁当の蓋を開ける。
中に入っている唐揚げの良い匂いがした。食欲が湧き出る。
「これ、優菜のな」
そう言って渡された弁当の蓋を、私も開ける。
日本人はきっとみんな大好きなのり弁。おかずは、煮物、唐揚げ、焼き鮭、サラダ、きんぴら、ほうれん草のおひたし。好物ばかりの弁当を前にして思わず
「おいしそ」
感情が声に出てしまった。
「おう、なかなかふめぇぞこれ」
雅之が口をもごもごさせながら言う。
私はもうすでにお腹を空かせていた。腹の虫が鳴る前に食べてしまおう。
「いただきます」
私が言うと、男性も続けていただきますと言い、みんなでのり弁を食べ始めた。
それからしばらくは無言だった。ちらっと雅之の弁当を見ると、もうすぐ空だった。


雅之は空になった弁当をコンビニの袋に入れてウーロン茶をぐびっと飲み干し、こう言った。
「とりあえずお前ら、連絡先交換しといて」
「「はあ?」」
私と誠司さんの声が重なる。
「これからも3人で集まろ、こうやって」
集まろって言ったって私らまだそんなに仲良くなってない。連絡先交換したところでこの人に連絡は、しないと思う。たぶん。でも、本人を目の前に嫌だとは言えず私はスマホを取り出す。
すると雅之が言った。
「でもこいつ、携帯持ってないからパソコンのアドレスな」
え。と思わず声が出る。
「携帯、持ってないんですか?」
今時、珍しいと思った。
雅之が「ありえねーよな」と笑っている。
ありえないと言われた本人は私のスマホを見ながら
「あまり、実用性感じないんだよ」と言った。

私にとって携帯は実用性の塊だった。
私は携帯がないと生きていけない人間だ。友達とコミニュケーションがとれるSNSも大切だし、美味しいお店の情報だっていち早く分かる。食レポをブログに書いて、沢山の人に情報を発信することだってできる。

ここまで考えて気づいたが、私が必要としているのは携帯じゃなくてネットツールなのかもしれない。
でも、現代に生きるみんなは結局そうなんじゃないだろうか。

この人は、ちょっとズレてる。

私は誠司さんに教えて貰ったパソコンのアドレスを入力して、登録した。
登録はしたが、連絡することなんてあるのだろうか。

雅之と比べて食べるのが遅い私と誠司さんが、やっとお弁当を食べ終えた時。
「あ、ゲームしようぜゲーム。リビング行こ」
雅之はまるでこの家の主人のように言った。
そして勝手に階段を降り、リビングに向かっている。
私と誠司さんは仕方なく雅之の後を追った。