「とりあえず、のり弁とコロッケ食べますか!ちょっとチンしてくるわ」
雅之はそう言い、部屋を出てった。
恐らくキッチンに行くのだろう。私はこの家のキッチンの場所を知らない。初めて来たから当たり前の事ではあるが、雅之は恐らく、何度もこの家に来たことがありこの人とすごく仲が良いのだろう。私だけが場違いな気がする。私がいない方が楽しいんじゃないだろうか。
雅之が階段を降りる音が聞こえる。

私はふと、部屋を見回した。
この部屋に入ったときから気になっていたが壁にはギッシリとコレクションケースが置いてあり、そこには女の子やロボットのフィギュアが沢山並んでいた。
でも、1番多いのはお城の模型。日本のお城だというのはわかるが、私はどれがどこのお城かなんて、見分けがつかない。
この部屋の家具はほとんどがコレクションケースだが、一つだけ本棚がありそこには難しそうな本がたくさん並んでいた。歴史が好きなのだろうか。私でも知っている戦国武将の名前が見える。

「えっと…」
……気まづい。さっき知り合ったばかりの人と2人きりなんて、何話せばいいんだろう。
誠司さんを見ると、あちらも居た堪れないようで私から目を逸らした。

この人は、正直雅之とは真逆の外見をしていて外見だけだと全く仲良さそうに見えない。

さっきまで寝ていたからか、頭には寝癖。服装は上下スウェットというだらしない格好だが、細いフレームの眼鏡をかけているのですごく頭は良さそうに見える。眼鏡ってだけだけど。
テーブルの上には沢山のタバコの吸殻があった。タバコ吸うってことはこの人成人しているんだ……

雅之との繋がりはなんだろう。年齢も違うし、外見も全然違う。むしろ正反対なのに何故仲良くなったんだろうか。

「飲み物、何飲みますか」
男性がふと、呟く。見るからに年下の私にもなぜか敬語だ。
「あ、な、なんでも大丈夫です」
相変わらずお互いに目を合わせられない。
「じゃあ、ウーロン茶で。持ってきます」
男性は眼鏡のフレームを上げながら言った。
そして、何かから逃げるように部屋から出てった。

今頃、多分キッチンで2人は顔を合わせてる。私のことでも話しているのだろうか。
ああ、もう早く帰りたい。