「ご飯って弁当かよ!!!!」
私は雅之の頭にのり弁の入ったコンビニの袋を叩きつける。
「いって!!」

今日は約束どうり、雅之にご飯を奢ってもらった。
が!
それがまさかコンビニ弁当だなんて、期待外れもいいところだ。

「信じらんない」
コンビニ弁当ならcafeSAKURAのまかないの方が100倍良い。
「のり弁だぞのり弁!これが嫌いな日本人なんていねえだろ!」
雅之は何故か逆ギレしていた。
のり弁は確かに私も好きだ。嫌いな日本人なんていないって意見もまあわからないこともない。
だけど、ご飯奢るなんて言われたら普通期待するじゃん!
カフェのランチとかだと思うじゃん!

口をとんがらせていると雅之が言った。
「のり弁。今から会うやつの大好物なんだよ」
「そんなの知らないし!」って怒りながらまた頭を軽く殴ろうと思ったが、雅之の顔を見て、それを飲み込んだ。

……私は今日、雅之くんの友人に会うらしい。詳しい事は聞いてない。ただ、私に会わせたい人がいる。それだけしか聞かされてなかった。

「私今から会う人と、何話せばいい?」
私が少し先を歩く背中に問いかける。
んー、と声を出しながら雅之は私の質問の答えを考えていた。いや、もしかしたら考えてる素ぶりだけかもしれない。
「いいよ、優菜はいつもどおり。そのまんまで」
また、後ろ姿だ。と思った。
雅之は大事な話をする時いつも後ろ姿しか見せてくれない。
私に見られたくない表情でもしているのだろうか。

そして、話を逸らすかのように”こっち近道なんだよ”と、商店街に入った。
私はこの時、歩幅の大きい雅之くんとだいぶ距離ができてしまっていたことに気づく。
雅之は声が大きい。でも、距離が広がるとさすがに聞き取れない言葉もあるかもしれない。
私は、雅之の言葉を一語たりとも聞き逃したくなかった。
小走りで雅之の横まで追いつく。
そんな私に気づいたようで「優菜、コロッケでも買ってくか」と、言った。
この商店街1の名物らしいかぼちゃコロッケのお店の行列に私達は、並んだ。