「お客様お帰りです!」
私は、お皿の片付けをしていたので、手が空いていた雅之に言う。
時計を確認した。オーダーストップの時間はとっくに過ぎている。今帰るお客様が、本日最後のお客様だ。

「ありがとうございましたー!」
雅之がレジ作業を終え、お客様が扉を閉めた。
よし、これで今日の営業は終了。
私は外のライトを消しに行き、メニューボードを中に閉まった。
これで店内の掃除が終われば、やっと家に帰れる。

私は倉庫にモップを取りに行き、床の掃除を始めた。
奥で小百合さんと幸人さんと茜ちゃんが何やら楽しそうに話しをしている。
また茜ちゃんののろけ話かな。そんな事を思っていると雅之くんが話しかけてきた。
「優菜って明日休みだっけ?」
私は雅之に聞かれ頭の中にスケジュールを浮かべる。
うん、明日は確かに休みだ。
「休みだよ。それがどうかした?」
”てか、雅之も手を動かして”と、私は雅之に布巾を渡し、テーブルを拭くように急かす。
雅之はしぶしぶそれを受け取り、テーブルを拭きながら話を続けた。
「明日、俺も休みなんだわ。ちょっとご飯でも一緒にどうかなあって思って」
「え!ご飯?食べたい!」
私はご飯と言われると絶対に誘いを断れないと思う。そして多分雅之もそれをわかって言ってる。

「もちろん、雅之のおごりだよね?」私が冗談っぽく言うと「いいよ」と当たり前かのように返されたから少し拍子抜けだ。

「ちょっと優菜に、会わせたい人がいるんだよね」
雅之が布巾を天井に向かって投げて、それをまた器用にキャッチした。
私は布巾を目で追う。
小学生の時、掃除の時間男子がこれよくやってたな…
雅之は時々子供のような仕草をする。

「会わせたい人?」
「うん。多分優菜とは上手くいくと思う」
雅之はそう言い残し私に背を向け、奥の方のテーブルを拭き始めた。

私とは上手くいくってどういう意味だろう。
私”とは”って、雅之はその人と上手くいってないのだろうか。