って、お伽話は始まる。


お話の中のお姫様は、いつも和やかで優しくて心の綺麗な人。


最後には王子様と結婚してハッピーエンド。




あたしはいつから、そんなお話を読まなくなったのかな。




捻くれてるわけでも、あたしがひん曲がってるわけでもなく、現実を見たとでも言うべきか。




ただ、夢から醒めた、そんな表現が合ってると思う。



その夢がどんなものだったのか、思い出すことは出来ないのだけれど。




その、ひどく心地の良い夢は、いつからかあたしを縛り付ける。





ボーッとする頭を覚醒させて、窓を開けた。



途端に入り込んでくる春の風。桜の匂い。清々しい朝の空気だ。





高校生1日目の朝は、綺麗に晴れた青空が広がっていた。


雲もない。桜が綺麗に咲いてる。





「…晴れたねぇ。」



そんなあたしのつまらない呟きは、朝の春風の中に溶けて消えた。