日焼け止めもしっかり塗って、いざ飛び出した海は初夏を感じさせる水温だった。
あたしは浮き輪の穴の部分に座る形で位置をセットする。胴体と足が引っかかって落ちることはないし、この浮き方が好き。
浮き輪に身を預けて、後は潮任せ。
好き勝手に流れて流されて。
目を閉じて何も考えずにする日向ぼっこは最高だ。ここまで有意義な時間てそんなにないだろうな。
時間がゆったりしてる。
みんなの騒ぎ声が耳の遠くの方で聞こえた。
太陽の光が眩しくてそのまま瞑った目を開けられない。
眠くなってくるなあ…。
ーーバシャァアアアン!!!
…何事!?!?
さっきまで眠気が襲ってきていたはずなのに、気づいたら夢の中じゃなくて水の中にいた。
慌てて水面に頭を出して、顔についた水を手で払う。
周りには安田と他のクラスメイト。
ポカーンとした顔しかできないあたしに、満面の笑みを浮かべるみんな。
「大、成、功〜〜!!!!」
イェーイ!と盛り上がるみんなの先走りに首を傾げる間も無くすぐさま気づくでしょう、この状況の意味を。
浮かぶだけの無防備なあたしは奴らにひっくり返されて見事にドボン、こんなザマだ。
髪が濡れるのが嫌だと借りたはずの浮き輪が仇になって悔しいことこの上ない。


