なんて当然上手くいくわけなく。
ガシッと手を掴まれた。
ひぃいいい!!!!
なっ、なに!?
心の中ではそんな風に思っているけど、顔はいたって冷静だ。
全身から止まらない冷や汗。
彼の影があたしを覆い尽くしそうで、その場を離れることしか頭になかった。
汗をかいた顔を月が照らす。
こんな時にまでやめてよ。
「お願いします!」
何をされるのかと思いきや、キラキラ光るミルクティー色の頭を、あたしは見下ろしている。
深々頭を下げられても、あたしはあなたが怖い。
「やめてください…。」
声が裏返ってやないかと心配になった。
どうせロクな話じゃないと思ったのは、おじさんの顔があたしにそう訴えかけたから。
帰らなきゃ。
そう思って、握られていた右腕を振り払い走り出す。
生ぬるい風をきって走った。
あたしに纏わりつく、何かを振りほどくように走った。
そうしないと、持ち帰ってはいけないものをあたしが連れ込んでしまいそうだったから。


