安田達とも別れ、最寄り駅でおじさんに電話をかける。
気をつけて帰ってこいよ~、と酔ったおっさんの声が電話越しに聞こえた。
携帯を制服のポケットにしまう。
さて、帰るか。
そう思って、駅から自転車置場まで歩いているとき。
生ぬるい風が吹いて、後ろから革靴の音がした。
いつもなら気にしないのに、次第に近づく足音が後ろで止まったのが分かった。
「荒井沙凪さんですよね?」
え。
何?
急に恐怖心が体を纏った。
数メートル後ろからかけられた声は、確実にあたしを呼び止めている。
無視できない何かに完全に足を止めた。
振り返ると、明るい茶髪をセットして、グレーのスーツを着こなした若い男が立っていた。
なんかホストみたい。


