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「ってことがあってさ、まじでムカついた。」
昨日の愚痴を瞳にこぼす。
ボールが顔にヒットしたおかげで、あたしはみんなの練習の妨げにならないように見学することにした。
別にドッジぐらいなら余裕にプレイできるけど、見学できるなら丁度いいか。
汗かくから無駄に動きたくないし。
運動嫌いの瞳もマスク持参で見学する気らしく、2人で舞台の上に座って話していたら。
「荒井。」
後ろから声をかけられ瞳と反射的に振り向く。
そこにいたのは、昨日あたしの顔面にボールをお見舞いしてくれた彼。
「あ、ボール君じゃん。どうしたの?」
「ボール君ってなんだよ。」
「じゃあ南くん、何でしょう?」
「昨日悪いことしたから、…お詫びってゆうか。とりあえずこれ。」
そう言って、あたしに飴一袋を差し出す。
え。
「うっそ、別にいいのに。」
「女だし顔だし悪いからさ。」
それは否まないけど。
「あんた、ほんと律儀だよね。」
「じゃ、用はこれだけで練習戻るわ。安田うるせぇし。」
「ありがとうね、はいグレープ味あげる。」
「わ、サンキュ。ちなみに俺メロン派。」
「おだまり。」
そんな会話を交わしメロンの飴を持った彼は、ありがとうと笑いながら颯爽と輪の中に戻っていった。


