空気を入れ替えて気分を変える。
そのまま机の上に無造作に広がる書類を横目で見た。
綺麗な白い紙に字が溢れている。なんだか読む気にもなれない。
関係ないと言わんばかりにバラバラになったそれを簡単にまとめ上げて、茶封筒に突っ込んだ。
それをもう一度机に置いて見つめる。必然的に目がいく茶色の中に浮かぶ白。
宛名に書かれた自分の名前を見つめる。
なぜか出てしまうため息を無視して、茶封筒を一番下の引き出しの最奥にしまった。
「時間!」
「はーい!」
下の階から呼びかけるおじさんの声に返事をして、あたしは部屋を出る。
今日から高校生。
真新しい制服、まだ固いバッグ、きつく結んだネクタイ。
慣れない身の回りを感じつつ、玄関で茶色のローファーを履いた。
「おう。行ってこい。」
「うん、行ってきます。」
「ごめんな、入学式行けねえけど。」
「全然。おじさんも気をつけてね。」
見送りに来てくれたおじさんに笑って、あたしは家を出た。
まだ4月は肌寒い。
散らない桜を見上げながら、新しい通学路を歩いた。
まだ見ぬ憧れの高校生活があたしを待ってる。