街は真夜中を過ぎたというのに、酷く煩い。
街にはネオンが光り輝き、まるで昼間のようだ。
明るくて、眩しい。

『"仕事"だ』

凛とした男の声が、電話口から聞こえた。

「はい」

少女の綺麗な声が答える。

『大通り29番地。そこに"いる"』

「はい」

スマホを方と首に挟み込んで立ち上がり、掛けていた上着を着始める。
こちらも諸事項を伝え、電話を切ろうとした。
その時。
電話の向こうから、遠慮がちな声が届いた。

『...無理は、するなよ』

「...」

少女は袖に通し始めようと手を、止めた。
ゆっくり始動して。

「はい」

少女はそう言って電話を切ってから、ゆっくりと家の外へ出て行った。