「ははっ……。いつもみたいにできないね。
何かさー、気が狂っちゃうよ」

「ちな……」


雅樹が口を開いた時、ケータイの着信音が鳴り響いた。

数秒間鳴り続けるそれは、きっと電話。


雅樹は、床に置いてあったカバンからケータイを取り出して耳に当てた。


「もしもし……」

『あ!雅樹君!千夏が大変なの!』

「千夏が?」


どうやら、電話の相手は早織らしい。

相当焦ってるのか、声が大きいから内容が私にまで聞こえてきた。


『あのね、千夏が救急車で運ばれたの!
もう10時でしょ?あんまりにも帰りが遅いし、ケータイも繋がらなかったから千夏の親が心配してて、あたしにも連絡がきて……。
全然見つからないから探しに出たら、駅の近くで倒れてるのが見つかって……』

「そっか……。
連絡ありがとう。また何かあったら教えてくれるかな?早織ちゃんも落ち着いてね」

『うん。また電話する!』


電話を切ると、雅樹は私を見上げた。


「千夏……もう1回状況を見直そう!」

「うん……!」


私達は、お互いにしっかりと目を見て頷いた。