そう。

私の体は今、半透明になってる。

それに、床から10センチくらい足が離れているのも確かだった。


そのせいか、いつもは私よりもずっと上にあるはずの雅樹の顔が近くにあって、変な感じがする。



「えーっと、うーん……。ちょっと待ってよ!」


ぶつぶつと呟きながらドアを閉めて、雅樹はベッドに向かった。

そのままベッドの端に座ると、首をかしげて私のことを下から上へと眺めた。


「まさか……千夏、死んじゃったとか?
幽霊じゃないよね?」

「えっ?でも、死ぬようなことは何も……。
学校帰りに歩いてて、そしたらいきなり風が吹いてきて……、ここにいた」

「風に飛ばされてここにいたってこと?
軽いんだね、千夏」

「バカっ! ふざけないで!」


そう言いながら、私は軽く笑う雅樹の頭を叩いた。

いや、正確には『叩いてみようとした』。


「千夏……」


半透明の私の右手は、雅樹の頭を驚くほど簡単に擦り抜けた。