「うわぁ……。もう真っ暗……」


係の仕事で放課後の学校に残っていた私は、ふと見上げた空の黒さに驚いた。


まだ、時計は7時を指したばかり。

少し前まではこの時間にも水色が見えたのに、今はその気配もなかった。


少し沈んだ気持ちと一緒に、上半身をぐっと持ち上げる。

荷物を持って静かな廊下を歩くのは、何だか変な気分だった。


いつもとは違うふわふわした感覚を抱きつつ、靴を履いて校庭に降り立つ。

肌寒い、ひりひりとする風を浴びながら、私はいつもより早めに歩いた。



電車を乗り継いで行った先で、また風の中に身を投げる。


南和良村[みなみかずらむら]。

それが、私の住むの土地の名前。


人口約1000人のこの村には、この時間、街灯の気配しかない。

360度の見渡す限りの山は、せっかくの開放的な空を狭く切り取ってしまっていた。


そういえば、雅樹に話した本では、男の人が夜空を見上げてたっけ……。

会話の内容を思い出して、嬉しいような悔しいような気持ちを感じながら、私は空を見上げた。