雅樹だって、これからたくさんやりたいことがあるはず。

それに、こんなすかすかした私よりも、“普通”の女の子と過ごす方が雅樹のためになるに決まってる。


でも、私が離れないかぎり、雅樹はずっとこのままなんだ。


「ありがと……ごめんね。ごめん、ね……」


半透明の涙は、頬を伝っては制服にしみ込んで消える。

地面に染みを作ることもない水滴は、私の姿の虚しさを物語っていた。



知らなかった伝説の真相を知った。

そこに込められた、愛の深さを知った。

雅樹の気持ちを知った。

家族や早織の大切さを知った。


この姿になったことで得られたものだってたくさんある。



でも、サヨナラをしないといけないものが多すぎるよ……――――


いつの間にか、雅樹は足を止めてこっちを見ていた。


「謝るのはまだ早いよ、千夏……」

「えっ?」