山に登り初めると、何だか懐かしい気分になった。


中学生の頃は、この道を進むのが辛くて辛くて仕方がなかった。

足は痛いし、息は切れるし、……。

体力のない私には、苦痛でしかなかった……気がする。


それなのに今はこんなにもふわふわしてる。


何か不思議だなー、これ……―――


「雅樹、疲れてない?大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。もう結構歩いた気がするけど……なかなか着かないね。
1234メートルをバカにしてた」


雅樹が少し照れたように笑った。


「本当に?
かなり上に来たから寒くもなってきたんじゃない?」

「心配ないよ。歩いてるから割と平気だしさ」


雅樹はそう言って笑ったけど、寒くないはずがない。

今の雅樹は、Tシャツに長袖のシャツを羽織っただけで、登山をするような格好じゃないから……。


早く頂上に着いてほしい。



私の頭の中は、そのことでいっぱいだった……――――



「千夏! あれっ!!」