本から顔を上げて、ゆっくりと雅樹を見た。


「そうだね。うん……俺も、それは良い考えだと思うよ。
こうなったら、ななよについて徹底的に調べるしかないなっ!」


きらきらした笑顔を向けてくれた雅樹を見て、何だかほっとした。


「ありがと、雅樹」

「そんなの当たり前だって!昨日は少しふざけたことも言ったけど、千夏はこのままじゃいけないでしょ?
やりたいことどころか、やりたくないことだってできないし。
病院で寝たっきりじゃ、家族を悲しませるだけだし……」

「そうだね……。そんなの嫌」


このまま、たくさんの人に迷惑をかけるだけなんて絶対にダメ。


「じゃあ、早く墓石を探そうぜ! 空に1番近い所ってどこだろ?」

「確か、山に登ったんだよね?
この村で1番高い山なら、このこの公民館の裏にあるよ。今は登山客用に通路も整備してあるから、登りやすいと思う」


中学校の行事で1回だけ登ったことがある。

石や木でしっかりと作られた階段が作り出した自然が、妙に目に焼き付いていた。


「何メートルなの?」

「1234メートル……」

「最高だね、それ」


そう言って軽く笑うと、雅樹は「行くよ」と言って、公民館の外へと足を進めた。