七夜[ななよ]伝説。
そう呼ばれるこの伝説は、南和良村の人なら誰でも知ってると言われてる伝説だった。
最後の『願ひを叶へけむ』って言葉がいろんな人を引き付けたらしい。
自分の願いを叶えたい。
そう言って、昔からたくさんの人が研究をしているけど、訳のわからない文が解読されることはなかった。
そんなものだから、私だって七夜伝説をちゃんと覚えてるわけじゃないし、特別な執着もない。
なかった……――――
「やっぱり!今のを聞いたら繋がった!
星が7つだったなら、『七つ瞬く』だし、千夏が見た『闇』と『黒』は丸い穴のことだって言える。
それに千夏は星……つまり、『七つ数へ』た!」
「『七つ聞く刻[とき]風立ちて』も、そのまま……。
でも、『七夜の願ひ叶へけむ』は?
『七夜』っていうのは、きっとあの穴の名前でしょ?『の』は主体だから『が』に置き換えるとして……私の願いが半透明で雅樹の部屋に忍び込むことだってわけ?」
少し目を細めて雅樹を見下ろす。
すると、雅樹は軽く笑った。
「それなら俺は嬉しいんだけどねー」
言葉は軽い。
口から漏れる息も。
でも、何故か雅樹の目は重たい。
「どういう意味……?」


