「ねぇ、知ってた?
2組の里山さんって、雅樹君のこと好きらしいよ?」
少しにやりとした笑顔を浮かべながら、目の前の早織[さおり]が言った。
私よりも10センチ近く低い身長。
それに、ころんとした目が可愛らしい。
その目が、これ以上に面白いことはないとでも言うように、私を見つめてきた。
「はいはい、そうですか!
雅樹は顔も良いし、優しいからモテるもんねー」
「何でそんな風に余裕なの?
美人って恐ーい!」
「変なこと言わないで!」
私は、ぱしっと早織の頭を叩くと、そのまま席に着いた。
1番窓際。1番後ろ。
そろそろ秋だと言えそうなこの季節。
とはいえ、まだまだ日差しは痛い。
それでも、ここが“特等席”であることに変わりはなかった。
「ちーなつっ! 今日は何読んでるの?」