シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「まぁ、うちがひがんだ発言したもんだからさ、男の友情に火をつけちゃったんだな。航もああ見えて、まっすぐだから」
「そっか……」

 言い争いになった経緯がわかった。
 踏み込むべきではない領域に、亜依が間違えて片足を突っ込んでしまったのだ。

 遥人は家庭の話を一切しない。
 大学生になり、デビューライブにメンバーの家族が来たときも、遥人の親だけは姿を見せなかった。
 親の反対を押し切って音楽を続けるのは、ロックミュージシャンにはよくある話だけど、身近なケースとして考えると、やはり気が重い。
 遥人と家族の関係を変えることはできなくても、せめてメンバー間のしこりだけは取り除いておきたいと思った。

「ね、手、見せて」

 わたしは亜依の手に触れた。ふわっとした感触だった。

「やわらかいね」
「そう? 未波に言われてもなぁ……」
「この手、きっと硬くなるよ。手のひらも、指の腹も」
「どういう意味?」
「ドラム、やるんでしょう?」
「……うん」