シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 つぶやきが耳に飛び込んできた途端、わたしはフリーズした。
 お前、って言ったよね。
 お前、イコール、わたし。
 遥人がわたしを好き?
 ぶわっと自分の体積がふくらんだ気がした。心臓がフルスピードで暴れ始める。

「あ、あの、突然そんなこと言われても……っ」
「何勘違いしてんだよ。矢淵が玉川を好きなんだろっつー話」

 力が抜けた。膝が崩れそうになる。

「あ……そ、そりゃそうだよ、大好き。亜依は優しいもん。頼りになるし。からっとしてて、気がよくて、スポーツ万能で。もし女子校だったら、絶対もてるタイプだよ。靴箱とかロッカー開けると、ラブレターがどさどさーって」
「俺は、女子が腫れた惚れたの話ばっかりしてても、それをくだらねえとか思ったりしないけど、お前の場合はねじれてるな」
「な、何よそれどういう意味……」
「さあな」
「何がねじれてるっていうの?」
「自分で考えろ」

 これ以上話すつもりはないのだろう。
 遥人が扉を開ける。
 おはようございます、と意外にもしっかりと発音して、先輩たちに頭を下げた。
 わたしもならう。
 ヘッドフォンをした部長が、片手を上げた。
 防音ブースには、早くも先輩たちがこもっている。
 わたしは背負っていた寝袋を壁際に置くと、床にへたり込んだ。