シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 十四歳に戻った今、もやもやした劣等感が胸の中でくすぶっている。
 ありえたかもしれない別の未来。
 もし、わたしも才能を持って生まれていたなら。
 航、遥人、亜依に対して、引け目を感じないほどの才能があったら。
 音楽じゃなくてもいい。これなら誰にも負けない得意技がひとつあれば、もっと自信を持って振る舞えると思う。
 頑丈な身体、飛びぬけた学力、優れた容姿。
 ないものねだりだとはわかっている。
 生まれ変わったわけでもないのに、別の自分になれるはずもない。

 部室に着いた。
 遥人との会話が途切れたまま、終わってしまう。それは嫌だ。
 何か言わなきゃと焦ったわたしが口にしたのは、自分でもあきれるほど突拍子もない問いかけだった。

「亜依のこと、好きなの?」

 遥人がフリーズしたのがわかった。部室の扉を開けようとした手を止めて固まっている。
 返ってくる答えがYESでもNOでも、きっとわたしは困ってしまう。
 もっとましな話題を選べばよかった。自分で自分が嫌になる。

「ごめん、変なこと訊いちゃった。答えなくていいよ」

 遥人が長く息を吐いた。
 ああ、こんなに近くで遥人のため息を聞くのは二度目だ。

「むしろお前だろ」
「えっ」