シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 そうかもしれない。
 でもそれは、亜依がどんなチャレンジでも一度でそつなくこなしてしまうから。
 恐れるものなどないんだろう。

「亜依は優秀なアスリートだから、ミュージシャンとしてもばっちり基礎ができてるよね」
「……あ?」

 うわ、怖い。もともと整った顔だけれど、眉間にしわを寄せると、一気に渋みが増す。
 十四歳の表情じゃないよ、これ……。
 どうにか遥人がうなずいてくれる方向に話を持っていかないと。
 わたしは大げさと思えるほどに身振りを加えて言った。

「別に、体育と音楽に相関があるって言ってるわけじゃなくて、音楽に耳が一番大切なのはもちろんで」
「……」
「でもドラム叩くなら身体が資本っていうか、体力必須でしょう? 一曲や二曲でへばってたらライブなんてできないし。だから、バンド組むなら絶対、華も体力もある亜依は外せない人材だなあ、って」
「ご高説どうも」

 遥人がわたしを見た。
 初めて、わたしを見た、気がした。
 お前はどうなの、と目で問いかけてくる。
 わたし? わたしは……何かできるの?
 ほら、今だって言いたいことがあるのに、喉につっかえて言えない。
 駄目な自分を痛いほど思い知る。

 もちろん音楽は好きだけど。
 どれだけでも聴いていられる気がするけれど。
 実際、トライクロマティックにつき合って、寄り添って、何年も生きてきたのだけれど。