「未波、起きなくていいの? 図書館の自習席、早く行かないと取れないんじゃない?」

 部屋の外から聞こえた母の声に答える。

「もう起きてる」
「あら、偉いわね。朝ごはんできてるわよ」
「今行く」

 制服を身につけ、十四歳の身体に順応している自分を確認する。別人になるわけではないから、違和感を覚えずに済んでいるのかもしれない。
 朝食を食べながら、自分から切り出した。

「お母さん、今日って、おばあちゃんの病院つき添いでしょ? 新幹線の時間、大丈夫?」
「あ、そうね。そろそろ行かないと」
「洗い物はしておく」
「本当に? お願いしていい?」
「うん」
「未波が大人になってくれて助かるわ」

 よかった。
 祖母のお世話に出かける母を、少し笑顔にすることができた。
 これまでわたし、母にもたくさん心配をかけたんだろうな。
 身体は弱かったし、学校に行くのもしぶしぶで。
 亜依と仲良くなって、ましになった学校生活だけれど、苦手なことが得意になるわけではなかったから。
 体育の授業がある前日は、行きたくないなあ、ってぼやいたりもした。
 心配かけて、悪かったなあ……。