女子校に行ったら、少しはましな状況になるかもしれない。穏やかでおしとやかな花園に憧れて、中学受験の決心をした。
 できる限りの準備はした。
 具合のいいときには、何時間も机に向かって勉強し、模試では充分に合格範囲に入った。
 でも受験本番の時期に体調を崩したわたしは、第一志望の女子校に落ち、第二志望の女子校に落ち、滑り止めのつもりで受けていた共学に通うしかなくなった。
 意地悪な男子がいませんようにと願いながら、神南学院大学付属中学校に入学した。

 わたしの人生を変えてくれた出会いを振り返るなら、一番は間違いなく亜依だ。
 自分にとって大きな価値のあるものを語るとき、お金には代えられないという言い方をするけれど、亜依と出会う人生と、亜依と出会えない人生には、わたしが今までもらったお小遣いを全部合わせた額よりも大きな差があると思う。それどころか、これからわたしが就職して稼ぐ予定のお金を一部返上してもいいくらいだ。
 わたしたちを引き合わせてくれた神様に感謝している。
 中一で亜依と出会わなかったら、その後のわたしはない。
 神南学院を選んだのは、わたしの人生において正しい道だったと思う。

 亜依にとって、大切なものがあるなら、わたしも同じ気持ちで寄り添いたい。
 亜依にはいつだって幸せでいてほしい。
 弱いわたしをかばってくれる亜依が大好きで、亜依と過ごす時間は楽しくて。
 わたしたちは秘密なんて持たずに、素直に何でも話してきた。
 でもいつからか、ずれてしまったみたいだ。
 トライクロマティックの解散は、亜依にとって仕方がないことなんだ。受け入れられる現実なんだ。

 昨晩の飲み会の後、亜依たちと別れたわたしは電車に乗った。
 もう小さな子どもじゃない。
 送ってもらわなくても、一人で家に帰れる。