自宅の最寄り駅で降りた。
 改札口へ続く階段に足を踏み出す。
 数歩下りかけたところで、背中に衝撃を受けた。
 さっき、ほんの数十分前、温かな手が添えられていた場所に、無慈悲な圧力がかかる。

「あっ」

 誰かの声と、何かがこすれる音。
 鞄が手から離れた。足が宙を泳ぐ。
 背中に感じたのよりも数倍強い痛みが、連続で全身を打つ。
 衝撃に目を開けていられず、わたしはまぶたを閉じた。
 暗い底へ落ちてゆく。
 意識が、途切れる。