約束して、航たちと別れる。
 祭りの後の気だるい空気。

 道を渡るとき、なんだか嫌な予感がした。
 航との約束を守れない気がした。なぜかはわからないけれど、不安で仕方がなかった。
 やっぱり送ってもらった方がよかったのかな。
 左右をよく確認し、横断歩道に踏み出す。
 途中で歩行者用信号が点滅し始めた。
 わたしの鼓動も速くなる。
 急いで。向こう側へ。
 なんとか車道を渡りきったわたしの背後を、明らかにスピード違反の車が通り過ぎていった。
 ほっと息をつく。
 歩くのが少し遅れていたら、はね飛ばされていたに違いない。

 駅に着いて、電車に乗る。
 車内には、わたし以外にも飲み会帰りの乗客が大勢いた。
 みんな楽しそうで、酔いに任せて仲間と大きな声で喋ったり、つり革にぶら下がったりしている。
 わたしはどう見えるんだろう。
 気楽な学生?
 失恋直後の小娘?
 なんでもいい。
 他人からどう見られるか、そんなことどうでもいい。
 もし、もう一度、バンドをやり直せるなら。
 航だけに重荷を背負わせずに済む方法を、きっと亜依と遥人も探すに違いない。