遥人はどこに就職を決めたんだっけ。一度聞いた気がするけれど、思い出せない。
 やっぱりわたし、酔ってるのかな……。
 小皿に箸を伸ばした。

「あ、それ、航が辛子かけたから……」
「……」
「辛いでしょ、出しな」

 亜依がおしぼりを用意してくれたけれど、わたしは呑み込んだ。
 ちょっとぴりっとしたけれど、食べられないほどじゃない。

「未波、今日のあんた、ちょっとおかしいよ」
「んー?」
「いつもはこんなに飲まないじゃん。ふわふわしてても、ちゃんと自制してる」
「そうだっけ?」
「そんなにショックだった? 解散」

 店内のざわめきが、ぐわんとゆがんだ。
 ――今、なんて言ったの?

「ちゃんとみんなで話し合って決めたことだよ。これ以上続けてても、新しいものを生み出せないから、区切りをつけようって」

 みんなって、誰?

「大学卒業はいい機会だから、一度ここで終わらせる。十年か二十年経って、また集まって再結成する可能性がないわけじゃないんだからさ。今は笑って別れようって」