ビールはお預けにされて、代わりに握らされたコップを口に運ぶ。
 口をつけると、冷たかった。喉が潤う。
 さっきまで夏の中にいたから、汗をかいたのかもしれない。

「合宿、途中で帰っちゃって……かっこ悪かったよね……」
「んん? 何言ってんの、あんた」
「酔いつぶれて、夢でも見たんじゃないか」

 わたしは目をこすった。
 遥人が向かいの席にいる。
 隣には亜依。前には遥人。
 そうか、飲み会はまだ終わってなかったんだ。互いに得た内定を祝福する飲み会。
 わたしたちは大学四年生で、来年四月には社会に出る。

「航は?」
「トイレって言ってたけど、全然戻ってこないね。ハル、様子見てきてよ」
「なんで俺が」
「うちが男子トイレ行ったら問題でしょうが。ほら、倒れてるかもしれないから、早く」

 亜依に急かされ、渋々と遥人が立ち上がる。
 女の子の視線を当然のように集めながら、店内を横切る。