シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 声を張ると、ようやく振り向いた。

「何してるの……?」
「見りゃわかんだろ」

 プールには水がなみなみと満ちていた。
 コースロープは張られていない。
 ところどころ光を反射する水面は、たなびく一枚の大きな布のようだ。
 風が作る小さなさざなみが、縁にぶつかって、たぷんたぷんと揺れている。

 遥人はぱっぱと制服を脱ぎ捨て、海水パンツ一枚になった。制服の下に仕込んでいたらしい。
 わたしに見られていることなど気にもかけない、堂々とした脱ぎっぷりだった。
 蝉の声が一瞬、止んだ気がした。
 遥人はゴーグルを手に、水に入った。
 しぶきが上がり、わたしは後ろに飛びのく。
 濡れる距離ではなかったけれど。

「自由人……」

 ゴーグルをセットし、二十五メートルをあっという間に泳ぐと、ターンして戻ってくる。
 プールの底に足を着くことなく、再び泳ぎ出す。
 二十二歳になったわたしから見れば、十四歳の遥人は無知で、子どもで、経験不足だ。でも、わたしには絶対に手に入れられない輝きを持っている。
 とても綺麗で、ずっと眺めていたくなる。
 癖のないクロール。
 力強いキック。