シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「あ、あの、天文部の方ですか?」
「そうだけど」
「二年一組の、宮野遥人を見かけませんでしたか」
「知らないなあ。悪いけど」
「そうですか」
「上でそれらしいやつを見つけたら、一応声かけてみる」
「ありがとうございます。お願いします」
「そうだ。放送で呼び出してもらえば?」
「ああ、いえ、そこまでは」

 引き留めてすみません、とわたしは頭を下げる。
 多分、先輩だと思われるそのひとは、一度も振り返らずに上階への階段を上っていった。
 理科棟の屋上は天文部のテリトリーだから、中二の、部外者のわたしがお邪魔していい場所ではない。

 なんとなく、遥人には空に近い場所が似合う気がしたのだけれど。
 他に遥人が時間をつぶしていそうな場所を思い浮かべる。
 体育館――いなかった。
 講堂――いない。
 中庭……グラウンド……テニスコート、来賓用駐車場。足が疲れてきた。

 この時点では、まだ三人は親しくなっていない。
 個人主義で、それぞれに行動している彼らをひとつにまとめ上げるなんて、どんな技を使えばできるんだろう。
 当たり前のように三人が部室にいる状況は、とても貴重だったんだ。
 今更のように、わたしは知る。

 学校中を探し回って、やっと見つけた遥人は、プールにいた。
 白いシャツ、黒いズボン。タオルを手に、裸足でプールサイドを歩く。
 わたしは金網越しに声をかけた。

「遥人。……遥人!」