シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 わたしはうなだれた。
 辛辣な亜依に、何も言い返せなかった。
 その通りだから。みっともないところを見せるのが嫌で、失敗したくなくて、わたしはチャレンジから逃げている。

 自分の夢や憧れを、身近な三人に託したいけれど、この時点ではまだ、トライクロマティックは結成していないんだ。
 航も亜依もばらばらに行動している。遥人に至っては、どこにいるのやら姿も見えない。

 軽音部には中一から高三まで六学年のメンバーがいる。中高一貫校ならではの層の厚さで、演奏する曲によって、流動的にメンバーを入れ替える。
 先輩後輩の仲がよく、上下関係も厳しくない。
 だから同学年でつるむ理由なんてないのだ。 
 八年前の夏は、わたしが思い描いていた楽しいものではなかった。

 亜依から視線を外す。
 ヘッドフォンをして首を振っている先輩。ギターの調弦(初めて間近で見たからよくわからないけれど、多分)をしている先輩。携帯で動画を見ている先輩。ポップコーンを上に放り投げ、口でキャッチしようとして、あたりを散らかしている先輩。
 誰もが自分のやりたいことをやっている。
 強制なんてできない。
 亜依には、好きな音楽を好きなひとと一緒に奏でる自由がある。

「音合わせしまーす。玉川、おいで」
「あーい」