シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 お弁当が手配されるなんて、業界っぽい。
 焚き火で飯ごう炊さんといったワイルドな合宿も覚悟していたから、拍子抜けした。
 つくづく中高の部活にしては恵まれていると思う。お坊ちゃまお嬢様が集まる学校だからと言われればそうなのだけれど。

「お昼は自由に取ってね。食堂はやってないけれど、学校の外の売店は開いてるはず。午後五時に部室に集合してもらえばそれでいいわ」
「あの、合宿って聞いたので、千本サーブとか、千本ノックとか、グラウンド十周とか、そういうのかと思ったんですけれど、違うんですね」
「軽音部でそんな練習をする意味ある?」
「確かに……そうですよね」
「もちろん演奏技術を磨くのは大切よ。反復にも意味はある。でももっと大切なことがあるでしょう? 精神を自由に解き放つ。素直な心で音楽に触れる。今回の合宿を通して、わたしはみんなにもっと自由になってもらいたいの」

 さえずるような声が、自由、自由、と連呼する。
 さすが音楽教師は違う。
 他の先生だったら、こんな指導はしないだろう。

「さっき、青島くんと教室で会ったんですが、もしかして、全員が違う場所で課題に取り組んでるんですか?」
「さあ……場所は指定していないから、わたしにはわからないわ。自由な気持ちで、三日間かけて、何かひとつを仕上げてくれればいいの。でも一人でやりなさい、って言ったわけではないのよ」
「わかりました。じゃ、部室に行ってみます」
「施錠されているところ以外は自由に使っていいけれど、熱中症にならないよう気をつけて。こまめな水分補給を忘れずにね」
「はい」