シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「では解散をまぬがれたトライクロマティックの、新年一発目、聴いてもらえるかな。『せつなアップデート』という歌です」

 亜依も航も動揺していない。
 いきなり遥人があんなことを言ったのに、リハーサルではやらなかった曲を奏で始める。全て予定通りということらしい。

(熱い日々を終わりにしないための闘い)
(守りたいのはあの日の約束)
(何度でもやり直す)
(せつなを繰り返す)
(信じてる祈ってる)
(これが最後のアップデート)

 八年前の合宿のときに、四人で初めて作った曲。
 遥人がくれたノートの一ページ目に、わたしが書いた歌詞。ところどころ、メロディに合うよう文字数が調整されている。
 不器用に、でも必死にバンドの解散を回避しようと動いた夏の日。
 大好きな三人がばらばらになってしまう未来を拒んで、運命に抗った。
 失いたくないもののためなら、ひとは強くなれる。

 ファンの反応が怖かったけれど、歌い終えた航が大きくうなずいて、ステージに向けられた多くの笑顔を確信した。