シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「お前はトライクロマティックの四人目のメンバーみたいなもんだから」

 温かな拍手に包まれ、嬉しいよりも、恐れ多い気持ちになる。
 わたしは両手で顔を覆い、へこへこと頭を下げるしかできなかった。

「俺たちだけだったら、トライクロマティックは限界が来る。でもお前がいるから、行けると思った。この先は、お前がいないと成り立たない。トライクロマティックには、音源化してない未発表曲がある。それをこれからやりたいと思う」
「ちょっと待ったー!」

 航が割って入る。
 いつの間にか、わたしを照らしていたライトは消えていた。

「ニューイヤーまであと三十秒切ってるよ! 残りサーティーセカンズないよ!」
「……なんで英語」
「なんででもいいから! え、謹賀新年って叫ぶ? ほら、みんな、ドリンク持って。用意はいい? カウント行くよ。十五秒前……十、九、八、七」

 これは予定されていた通りのMCなんだろうか。
 わたしは呆然としながら、ステージを見守った。

「三、二、一、ハッピーニューイヤー!」

 周囲の客がこちらを振り向き、乾杯を求める。戸惑いながらもわたしは、缶を掲げて応じた。
 ビールの味もわからない。ただ冷たいとしか。
 新しい年の到来を祝うムードに押されて、遥人の言葉を咀嚼できずにいる。
「お前がいないと成り立たない」なんて。
 とんでもない爆弾を投げつけられた気がするけれど。