……違和感。

 見覚えのある携帯だ。時刻表示は八時十分。アラームも止まった。充電もされている。でも。
 何かがおかしい。
 布団をめくり、自分が着ているパジャマを見下ろす。
 古いTシャツとハーフパンツ。この星柄のセットは結構気に入っていて、色があせるまで何年も着倒したっけ。
 とにかく暑い。カーテン越しの光と熱は、部屋を燃やし尽くそうとしているのではないかとおののくほど容赦がなくて。
 十一月なのに、異常気象だろうか。
 見回せば、自分の部屋なのにどこかおかしい。
 ドアの上に引っかけた制服は、見覚えのある紺色のプリーツスカートと白ブラウス。
 学校が設立されて、何十年かの間に何度か制服改定の波が起こったらしいけれど、結局、わたしたちの卒業まで同じデザインで変わらなかった。中高を通して六年間、毎日着た。
 さすがに二十二歳がこの制服を着たら、コスプレ感がぬぐいきれないと思う。ビジネススーツも着慣れないけれど、中高時代の制服は似合わないはずだ。
 机の上に目をやれば、ノートと学校指定の鞄が置いてある。

「未波、起きなくていいの? 図書館の自習席、早く行かないと取れないんじゃない?」

 ううん、よくない。起きないと。
 部屋の外から聞こえた母の声に、口の中で答える。