シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 風の中に金木犀が香ったかと思うと、あっという間に秋が深まり、今年の残り日数が二桁になった。
 着る服が一枚増えて、忙しい日常は加速度を上げる。
 家で卒論清書のためにパソコンに向かうときは、トライクロマティックのCDをエンドレスでかけて自分を励ました。
 どうにか卒論を提出し、学生としてのノルマを果たし、カウントダウンライブチケットを売りさばき、あっという間にライブ当日を迎えた。

 会場入りは午後一時。
 各自で昼食を済ませてからの集合だ。
 遥人と航は一緒に食べてきたと言った。
 前日から、航の部屋に遥人が泊まり、文字通り同じ釜の飯を分けたらしい。

「どんだけ仲いいんだか」

 亜依がからかう。
 スリーピースバンドを性別で区切ると、二対一の構図になる。今までも地方でホテルに泊まるときは、亜依が別室になりがちだった。
 さすがに中高の合宿のように大雑把な雑魚寝はできない。思い返せば、男子と女子がひとつ屋根の下で寝て、先生の監視もないなんて、自主性を重んじたゆるい部だった。
 懐かしさに浸っていると、亜依も似たようなことを考えていたらしい。

「一台のキャンピングカーで旅をしながらツアーできたらおもしろそう」

 その場合、誰が運転するのか、どの席に誰が座るか、もめそうだ。想像してちょっと笑った。