シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 飲み食いした分を割り勘で支払い、夜の街に出る。
 財布を取り出したときに気づいた、鞄の奥に沈んだ、A5判のリングノート。
 過去からの預かり物だとぴんときた。合宿のとき、遥人がくれたノートだ。
 この八年間、自分がこれをどう扱っていたか思い出せない。いわば他人の持ち物を、お前のだと言われて押しつけられた感覚に近い。
 これはタイムリープの特徴で、やり直した過去と現在の間の記憶がすぐには埋まらないのだ。徐々に、そういえばこうなったんだっけ、と納得できる記憶が立ち上がってくるはずなのだけれど。
 仲間と別れ、一人になってから、わたしはおそるおそるページをめくった。
 細かい文字が罫線に沿って並ぶ。

 十代の自分が綴ったらしい、青いフレーズが、都会の灯りに照らされる。

 こんな表現するんだ、と我が事ながら驚かされたり、赤面したりを繰り返した。
 そういえば教室の一番後ろの席で、こっそり書いていたっけ。
 メロディが先にあって詞をつけたものと、自分にしか見せないつもりの詩が混在している。どちらも間違いなくわたしらしさがあふれていて、ごまかしようがない言葉たちだった。
 抜け落ちていた八年間があぶり出しのように浮かび上がり、記憶のつじつまが合っていく。