夜明けが近づく頃、小屋の外で鳥が鳴き始めた。ホオジロかヒヨドリか、学内には緑が多く、野鳥の楽園になっているのだ。
 数人分の寝息が部室に満ちていた。
 亜依はわたしの隣、遥人と航は階下で寝ている。
 不思議な気分だった。静かに落ち着いているのに鼓動は高らかに鳴り、明るく冴えた思いがある。
 ねえ、聞いて、と起こして回りたかった。
 世界が目覚める音を。
 朝を告げる喜びの声を。
 人間の言語とは違う鳥のさえずりも、彼らなら音楽に取り入れて奏でるだろう。目にするもの、耳にするもの、全てを濾過して作品に昇華するのがクリエイターの性分だ。
 これから三人が生み出す楽曲を聴きたい。新しいメロディ、新しいリズムを届けてほしい。
 わたしも返すから。
 応援する気持ちだけじゃなくて、時間やお金でもなくて、わたしが形にするまではこの世界に存在しない何かを。
 彼らと一緒に物作りがしたい。素敵な音楽を残したい。
 自然にそう思って、少し笑った。
 ……ああ、わたし、変わったな。
 以前はそんな願いを持つことすら、おこがましいと思っていたのに。

 新しい朝の訪れを告げるさえずりが――四度目の十四歳の最後の記憶になった。