今回、遥人はわたしのことをずっと気にしてくれていた。
 ふたりきりになったとき、わたしに交際を持ちかけてきた。決してからかう態度ではなかった。
 本気で好意を持っていると考えていい。でも、だから衛藤先生の誘惑もはねのけるはずだと油断するほど、わたしはうぬぼれていない。
 先生のこともわたしは信用していないのだ。十も年下の教え子に釘を刺されたからといって、彼女がその後の振る舞い方を変えるとは思えない。
 わたしがやり直せた過去は、合宿の短い期間だけで、その後の八年間には手を下せない。このタイムループのルールは変えられない。
 ブラックボックスの入り口しか見えない状態で、楽観的にはなれなかった。
 ふたを開けてみなければ、未来はわからない。