でも彼氏彼女とか、恋とか、そういう枠に当てはめるには、わたしの立場は複雑すぎる。
八年後の未来からさかのぼって、ここにいるわたし。いつまた未来に戻るかわからない存在。大きな秘密を抱えている。
自分の正体を隠したまま、遥人とつき合うなんて無理だ。
バンドの解散を止めたい、そう願った最初の自分の気持ちだけを持って、元の世界に帰りたい。
「泣くなよ」と言われて、自分が涙を流していると知る。
わたしの恋は、トライクロマティックへの恋だ。
遥人とつき合うのでも駄目だし、航でも駄目、亜依との友情だけでも成り立たない。
選べないのではなく、三人を選んでいる。すごくわがままで、一般的な恋愛の定義とは違うだろう。でもまぎれもなく、失いたくないこの気持ちは恋なんだ。
「あの、おかしなことを言う自覚はあるんだけれど、聞いてくれる?」
「ああ」
「あるところに三人の、音楽が好きな中学生がいたの。同じ部活に入った三人は、バンドを組んで、曲を作る。中学、高校と進んで、学園祭のステージを何度か経験して、ネットに自分たちの音楽を上げて、高校卒業後、デビューする」
「それって、お前の予想?」
わたしはあいまいに微笑んだ。
「三人は同世代の支持を得る。ライブも盛り上がる。オーディエンスを幸せにして、自分たちもすごく幸せな音楽人生を送る」
「なんか実現できそうな気もするな」
「うん。実現するよ」
「その三人の中に、お前はいないんだな」
「うん……でもね、わたしはずっとそばにいるから。将来、遥人がもうバンドを続けられないと思ったときに、思い出してほしいの。終わりだって思ったその先に、もう少し進める道があるって」
「おい、まるで今にも死にそうな雰囲気出してんじゃねーよ。遺言とか受けつけねーぞ俺は」
「大丈夫。死んだりしない。ちょっと旅に出る程度」
「転校すんのか?」
「しないって。ちゃんと幸せにしてもらうからね、三人に」
「それは、三人じゃなくちゃ駄目なのか」
「うん。だって、バンドの名前はトライクロマティックっていうんだもの。三原色を意味する言葉。どんな色でも三色から作れるの」
八年後の未来からさかのぼって、ここにいるわたし。いつまた未来に戻るかわからない存在。大きな秘密を抱えている。
自分の正体を隠したまま、遥人とつき合うなんて無理だ。
バンドの解散を止めたい、そう願った最初の自分の気持ちだけを持って、元の世界に帰りたい。
「泣くなよ」と言われて、自分が涙を流していると知る。
わたしの恋は、トライクロマティックへの恋だ。
遥人とつき合うのでも駄目だし、航でも駄目、亜依との友情だけでも成り立たない。
選べないのではなく、三人を選んでいる。すごくわがままで、一般的な恋愛の定義とは違うだろう。でもまぎれもなく、失いたくないこの気持ちは恋なんだ。
「あの、おかしなことを言う自覚はあるんだけれど、聞いてくれる?」
「ああ」
「あるところに三人の、音楽が好きな中学生がいたの。同じ部活に入った三人は、バンドを組んで、曲を作る。中学、高校と進んで、学園祭のステージを何度か経験して、ネットに自分たちの音楽を上げて、高校卒業後、デビューする」
「それって、お前の予想?」
わたしはあいまいに微笑んだ。
「三人は同世代の支持を得る。ライブも盛り上がる。オーディエンスを幸せにして、自分たちもすごく幸せな音楽人生を送る」
「なんか実現できそうな気もするな」
「うん。実現するよ」
「その三人の中に、お前はいないんだな」
「うん……でもね、わたしはずっとそばにいるから。将来、遥人がもうバンドを続けられないと思ったときに、思い出してほしいの。終わりだって思ったその先に、もう少し進める道があるって」
「おい、まるで今にも死にそうな雰囲気出してんじゃねーよ。遺言とか受けつけねーぞ俺は」
「大丈夫。死んだりしない。ちょっと旅に出る程度」
「転校すんのか?」
「しないって。ちゃんと幸せにしてもらうからね、三人に」
「それは、三人じゃなくちゃ駄目なのか」
「うん。だって、バンドの名前はトライクロマティックっていうんだもの。三原色を意味する言葉。どんな色でも三色から作れるの」

